2022年6月11日投稿
6月5日付の日経新聞に、住宅の修繕費用が上昇しているという記事がありました。工事単価がこの10年で2割超上昇しているそうです。
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過去のコラム(購入後のメンテナンス費用について)でも書きましたが、新築一戸建てを購入してから10年~15年後に外壁、屋根の塗装や給湯器など設備のメンテナンス費用でおよそ240万円ほどの修繕費が掛かります。※外壁、屋根の種類や形状にもよります。
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240万円は今現在での単価ですので、人件費や資材価格の高騰により10年後に2割上昇した場合、240万円ではなく290万円ほどの費用負担になります。2011年~2021年の10年で2割上昇ですので、今後も続く人手不足などにより人件費の上昇が予想されますので、これからの10年は2割以上あがると思ったほうが良いかもしれません。
なお、アットホーム社が新築住宅購入後30年以上住んでいる人に行ったアンケートでは、築30年~34年で平均424万円の修繕費、築45年~49年で約750万円を修繕に掛けたという結果も出ています。
厚生労働省が発表した直近の平均寿命は、男性が81.6歳、女性が87.7歳で、健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる健康寿命はというと男性が72.6歳、女性が75.3歳になります。
仮に35歳の時に35年ローンを組んで家を購入した場合、ローンの完済は70歳になりますが、15年ごとに修繕を行ったとして50歳の時に1度目の修繕費用が290万円(240万円×1.2)、65歳の時に2度目の修繕費用が350万円(290万円×1.2)ほど掛かると思ったほうがいいでしょう。
その他、せっかく新居へ引っ越すのだからと家の購入時に、エアコン、洗濯機、冷蔵庫などの家電も新調した場合には、こちらも15年ほどで寿命を迎えることになりますので、家電の買い替え費用も掛かります。
形状がデコボコや凝ったデザインの外壁は修繕費用が割り増しになる
バルコニー上に門型のフレームのある家、壁をふかしてデコボコをつけた家を見かけますが、形状が複雑になるほど雨漏りのリスクも高まり、修繕費用も割り増しになる可能性があります。これは屋根にもいえることで、平面が複雑な形をしていると屋根も複雑な形状になりますので、雨漏りリスクが高まります。
また、バルコニー上部に門型のフレームのある家は、太陽光が室内に入りませんので、その分陽当たりも悪くなるというデメリットもあります。
10年~15年というメンテナンス時期は新築住宅の場合ですので、外装の修繕を行っていない中古一戸建てを購入した場合には、メンテナンス時期が早まる可能性もありますので注意が必要です。
最近では、セラミックコートなどで15年保証を謳う高耐久な外壁材もありますが、保証は基本的に塗装部だけで、外壁材のつなぎ目にあるシーリング材は基本的に保証の対象外になります。
給排水などの配管方法も大切です
床下や土に隠れてしまう上下水道やガス管などの配管ですが、地震や劣化などにより交換が必要になることもありますので、購入しようと思っている家の配管方法の確認もした方が良いです。イラストのように排水管が基礎コンクリートに埋まっている場合、コンクリートを壊さないと配管の取り替えができません。上記のような配管方法は最近の建売住宅でも滅多にないと思いますが、稀に見かけることがありますので注意してください。※特に半地下や半地下モドキの家でよく見ます。
住宅性能表示による維持管理対策等級3やフラット35sの耐久性・可変性タイプにおいては、配管がコンクリート内に埋め込まれていないことが基準の一つになっておりますので、上記に該当しているかは工事前でも確認することも出来ます。
維持管理対策等級3の家においての施工方法もお伝えしますね。
基礎立ち上がり部分にスリーブを入れて、コンクリート打設後に配管しますので、万一の時にでも配管の取り替えが可能です。

耐圧版にいれるタイプのスリーブもあります。
キッチンの排水管も確認を
キッチンの流し下にある排水管の確認もした方が良いですよ。こちらも滅多に見ることはありませんが、稀にジャバラのホースが接続されていることがあります。
ジャバラ管は油汚れがつきやすく詰まりの原因になったり、劣化によってホースが縮まり漏水のリスクが高くなります。
基礎部分の給排水管と同じく維持管理を考慮した家であれば、パイプで配管されていますので、完成物件の見学時に確認してみると良いですね。
今払っている家賃と変わらない金額で家が買える、予算内の物件があるからと勢いだけで家を買ってしまうと、購入後思わぬ出費で泣く泣く家を手放さなくてはならない
ことがないよう気を付けてください。
一戸建てを買うときは、ここでお伝えした維持管理だけではなく、耐震性能、断熱性能、気密性能などの家の性能以外にも地震、水害、液状化などのリスクも事前に確認しておきたいポイントはたくさんあります。
令和3年度の住宅市場動向調査をみてみると、家を買うときに重視したポイントは「間取り・部屋数が適当だから」、「住宅の広さが十分だから」、「住宅のデザインが気に入ったから」など広さと見た目で判断されている方が多いことが分かります。
もちろん広さとデザインという点は大切ですが、家の基本性能という点をもっと気にして家探しをされることをお勧めしたいです。
建売なんてどれも一緒でしょと思っている方が多いと考えますが、分譲会社によって性能は大きく異なります。
弊社のコラム「建売住宅の購入時に見ておきたいポイントと注意点」シリーズとオリジナル本【これからの建売住宅に必要な3つの性能とランニングコスト&メンテナンス費用】を読んでいただければ、住宅性能の重要性をお分かりいただけると思います。