
売却事例⑩【クイーンシティ板橋本町ラディウス】板橋区本町の中古マンション
値下げが難しいマンション。約9か月の販売期間を経て成約しました。
板橋区本町の中古マンション 「クイーンシティ板橋本町ラディウス」の売却事例です。
石神井川沿い、東南向き、最上階という魅力のある住戸でしたが、売却には時間がかかりました。
今回は、2019年6月に売却のお手伝いを始めてから、2020年3月にご契約になるまでの経緯をご紹介します。
売主様から最初にご相談いただいたとき、このマンションはすでに別の不動産会社で売りに出されていました。
売主様は買い換えで新しい住まいをすでに購入されており、その購入を仲介した不動産会社に、これまで住んでいたクイーンシティ板橋本町ラディウスの売却も依頼していました。ただ、思うように販売が進まず、「物件の近くにある富士屋不動産でも手伝ってもらえないか」とお声をかけていただいたのが始まりです。
このマンションは都営三田線「板橋本町」駅から徒歩8分。石神井川沿いに建つ3階建ての低層マンションで、今回の住戸は最上階。東南向きで陽当たりもよく、バルコニーからは石神井川が見え、春になると川沿いの桜を楽しめる、とても気持ちのよい住戸でした。
石神井川を望む住戸。春には川沿いの桜を楽しむことができます。
立地や住戸そのものには魅力があります。ただ、当時の販売価格を見たとき、私自身は「この価格で売るのは簡単ではないだろうな」と感じました。
とはいえ、価格を下げれば済む話でもありません。売主様には住宅ローンの残債があり、ある程度の金額で売却できなければ、売ったあとにもローンが残ってしまいます。
「売れないなら値段を下げましょう」と言うのは簡単ですが、売主様の資金事情を考えれば、そう簡単に価格を下げることもできない。そんな状態から、この売却は始まりました。
当社が販売に加わったのは2019年6月下旬です。すでに別の不動産会社が媒介していましたので、当社は一般媒介という形で販売をお手伝いすることになりました。
一般媒介ですから、当社が広告費や時間をかけて販売活動をしても、もう1社のお客様で成約すれば当社には仲介手数料は入りません。しかも、先ほど書いたとおり、売主様には住宅ローンの残債があり、「価格を下げましょう」と簡単に提案はできません。
正直に言えば、当社としてはあまり気が進む条件ではありませんでした。
それでも、せっかく物件の近くにある当社を頼ってご相談いただいたわけですから、「それならできるところまでやってみよう」と媒介をお受けしました。
しかし、販売を始めてみても予想どおり反響は多くありませんでした。当社への問い合わせだけでなく、他社からの案内もそれほど入らない状態が続きます。
そのまま3か月ほど販売を続けた頃、もう1社の不動産会社が媒介をやめることになり、そこから当社が専任媒介として売却を任せていただくことになりました。
一般媒介のときと違い、今度は当社が販売の中心になります。価格については依然として簡単に下げられません。
そうであれば、同じことを続けていても状況は変わりませんので、専任媒介になったタイミングで広告の出し方や物件の見せ方を改めて考えることにしました。
専任媒介になってからは広告にかける予算を増やし、まずは少しでも多くの方に物件を知っていただけるよう販売活動を強化しました。
ちょうどこの頃、売主様がお引っ越しをされて住戸が空室になりました。
居住中の物件では撮影できる範囲にも限界がありますが、空室であれば室内全体をしっかり見せることができます。そこで全室の360度パノラマ写真を撮影し、その画像を見られるQRコードを販売図面にも掲載しました。
360度パノラマを見られるQRコードを掲載した当時の販売図面。
空室になってもう一つ気をつけたのが、室内の状態です。
人が住んでいない家でも埃はたまりますし、ポストには広告がどんどん入ります。せっかく数少ないお問い合わせをいただいて内見に来てもらっても、玄関を開けた瞬間に埃っぽかったり、郵便物がたまっていたりすれば印象はよくありません。
そこで当社では、物件が会社から近いこともあり、定期的に室内へ行って拭き掃除をしたり、ポストの中を整理したりしていました。
問い合わせが多い物件なら、次から次へとお客様が来ます。しかし、この物件はそうではありません。
だからこそ、たまに来てくださる一組のお客様に、できるだけ気持ちよく室内を見てもらいたい。そんなことを考えながら販売を続けていました。
まったく話がなかったわけではありません。販売期間中には、価格交渉を条件とした購入申込みをいただいたこともあります。
売れない期間が続いている物件ですから、「せっかく申込みが入ったのだから、この機会に売った方がいい」と考えることもできます。
ただ、提示された金額では、売主様の住宅ローンの残債との関係で売却後に負担が残ってしまいます。売主様とも相談した結果、この申込みについてはお断りすることになりました。
2019年6月下旬に当社が販売に加わったときは、これから夏を迎える時期でした。それが、気がつけば秋になり、冬になっていました。
最初の頃は週に1回程度あった他社からの案内も、半年ほど経つ頃には月に1回程度。長く市場に出ている物件は、新しく売り出された物件に比べてどうしても注目されにくくなっていきます。
私自身も途中で、「このまま一生売れないんじゃないか」と思うことがありました。
もちろん、それ以上に不安だったのは売主様だったと思います。すでに新しい住まいは購入済みですから、売却できない期間が長くなればなるほど、気持ちの面でも資金面でも落ち着かない状態が続きます。
それでも、価格を下げられない以上、できることを続けながら買主様とのご縁を待つしかありませんでした。
そして年が明けた2020年3月。当社へ直接お問い合わせいただいたお客様に購入していただき、ようやく契約となりました。
2019年6月下旬に当社がお手伝いを始めてから約9か月。途中で価格交渉の申込みを断ったこともありましたし、案内がほとんど入らなくなった時期もありました。
その中で最後にご縁があったのが、当社へ直接お問い合わせいただいた買主様でした。
その後、無事に物件のお引渡しまで終わり、決済を行った銀行の近くにあった喫煙コーナーで、売主様と二人で至福の一服をしたことを今でもよく覚えています(笑)。
長い販売期間を一緒に過ごしたあとだっただけに、あの一服は本当に格別でした。
印象に残っているのが、この買主様が物件を見つけた経緯です。
買主様はもともと1LDKのマンションを探していて、ポータルサイトでも「1LDK」にチェックを入れて検索していたそうです。しかし、この住戸の登録上の間取りは2DK。そのため、1LDKだけで探している間は、この物件が検索結果に出てきませんでした。
その後、「2DKも見てみよう」と検索条件を広げたところ、この物件が表示され、当社へお問い合わせいただいたそうです。
物件そのものは何も変わっていません。
検索条件を一つ増やしたことで、それまで出会わなかった物件と買主様がつながりました。不動産のご縁というのは、こういう少しのきっかけで生まれることがあります。
実は、この物件は買主様が探していた1LDKに近い使い方ができる間取りでした。
もともとはダイニングキッチンと隣の洋室が分かれた2DKでしたが、購入後に間仕切り壁と扉を撤去し、二つの空間をつなげるリフォームを行いました。
完成後に立ち会った際、買主様から「私の理想としていた空間になって凄く嬉しいです」と言っていただいたことを今でも覚えています。
最初から「1LDK」という条件だけで探していたら出会わなかった物件です。しかし、少し視野を広げて2DKまで探したことで物件と出会い、最終的には自分の希望する1LDKのような空間に変えることができました。
購入後のストーリー お客様の笑顔がうれしい♪ → お引渡し後に行った間仕切り壁・扉撤去のリフォームを、ビフォー・アフターでご紹介しています。
石神井川沿いの桜並木。
不動産は、価格を下げれば売りやすくなります。ですから、売れなければ「値下げしましょう」と提案するのが一番簡単です。
ただ、売主様にはそれぞれ事情があります。今回のように住宅ローンの残債があり、「この金額以下では売ることが難しい」というケースもあります。
そうなれば、価格だけではなく、どうやって物件を知ってもらうか、どう見せるか、内見に来ていただいたときにどう感じてもらうか、といった部分を一つずつ考えていくしかありません。
この物件では、広告費を増やし、360度パノラマを撮影し、販売図面を工夫し、空室になってからは定期的に室内の清掃も行いました。
それをしたからすぐに売れたわけではありません。実際には約9か月かかっています。
それでも最終的には、売主様が希望していた条件に近い形で、当社へ直接お問い合わせいただいた買主様とのご縁につなげることができました。
不動産売却は、いつも短期間できれいに決まるわけではありません。
なかなか売れない時期に何をするのか。価格だけを下げるのではなく、その売主様の事情を踏まえてどこまで粘るのか。
今回の売却は、そんなことを改めて考えさせられた取引でした。