夏休みに、建築家・永田昌民さんが設計された住宅を紹介した「居心地のよさを追い求めて」という本を読みました。
これまで建築家の本はいくつか読んできましたが、この本が一番心に残る本でしたのでご紹介させていただきます。
間取りだけみるととてもシンプルなのに、平面だけでは伝わらない「家と外をつなぐ窓」の取り方が印象的です。
建売住宅では、とにかく窓をたくさんつけて「明るさ」や「開放感」を演出しようとすることが多いのですが、実際に窓を開けてみると隣家の壁しか見えなかったり、視線の抜けがなくて閉塞感を感じたりする物件を多く見かけます。
永田さんの住宅では、そうした「とりあえずの窓」ではなく、緑が見える、空が見える、庭を望むといった“意味のある窓”が設けられています。
また、窓の高さもいいんですよね。写真をみると、住む人の暮らしを具体的にイメージしながら、間取りが考えられていて、外部とつながる窓が配置されていることがよく分かります。
さらに、自邸が東京の路地状敷地に建っているという点も興味深かいですね。ちなみに、伊礼智さんの自邸も路地状敷地なんですよね。
建築家だからといって豪邸に住んでいるわけではなく、いたって庶民的な広さながら、設計を工夫して心地より空間にしておられます。
限られた小さな土地であっても、庭をつくり、通路部分に緑を植えることで、外とのつながりを楽しめる住まいが生まれています。
敷地条件が厳しくても、工夫次第でこんなに豊かな住まいが実現できるという好例だと感じます。また、家づくりにおいて「シンプルな間取り」、「外とのつながりがある窓」がいかに暮らしの質を左右するかも分かる気がしました。
一番好きなのは「所沢の家」、2階建てで2階に屋上菜園があるのですが、1階と2階をつなぐ階段は外階段しかなく、雨の日は傘をさして2階に上がるそうです。
2階に屋上菜園、室内に階段を設けなかったのは、お施主様の要望だそうで、2階に畑があるのは愉快であり、外階段しかないのも2階を”離れ”だと考えれば、内階段はないほうがいいという発想のようです。
不動産屋からすると、できるだけ「標準的な間取り」にした方がリセールがしやすいのではという考えですが、何十年も住む家なんだから、ここまで思い切った家の方が愉しい生活ができると思いますし、仮に売却することがあっても、すぐ売れちゃう気がします。
これから住まいを考える人にとって、とても参考になる一冊だと思いますので、ぜひおすすめです。