
マンション高層階は家具固定だけでは不十分? 地震から家族を守る家具の置き方と固定方法
EARTHQUAKE / 住まいの地震対策
地震から家族を守る家具の置き方と固定方法
8月23日未明、茨城県南部を震源とする地震が発生し、東京都23区などで最大震度5弱を観測しました。板橋区でも震度4を観測しました。深夜の地震だったこともあり、緊急地震速報の音で目を覚ました方も多かったのではないでしょうか。
地震対策というと、まず建物の「耐震性」に目が向きます。建物が倒壊しないことは何より重要で、当ブログでも耐震等級3の重要性を繰り返しお伝えしてきました。
しかし、耐震性の高い建物であっても、家具や家電が転倒・移動することで、室内にいる家族がケガをする可能性があります。
過去の地震における室内での受傷原因
| 地震 | 家具・家電製品の転倒が占める割合 |
|---|---|
| 阪神・淡路大震災(負傷・死亡原因) | 46% |
| 熊本地震(室内での受傷原因) | 33% |
出典:日経クロステック「大地震!マンション屋内はこうなる、屋内空間の安全確保の最前線」(2026年8月21日)
日経クロステックの記事では、防災科学技術研究所(防災科研)が行った実大振動実験(E-ディフェンス)の映像が紹介されています。今回はこの実験を参考に、家具の固定だけでなく、家具の高さや配置まで含めて考えてみたいと思います。
POINT 01
記事で紹介されているのは、東京・上野駅周辺に建つ10階建てマンション(耐震構造)の10階を想定した実験です。首都直下地震の想定地震波は、地表で観測される地震としては震度5強ですが、ゆっくり大きく揺れる長周期の揺れになる性質があり、「長周期地震動階級」は3に相当します。
そのうえで記事では、この10階の室内の揺れを地表の震度に当てはめると震度7に相当するとしています。あくまで目安の数字ですが、それだけ室内が大きく揺れるということです。
地表で観測される揺れ
震度 5強
長周期地震動階級 3(ゆっくり大きく揺れる性質)
▼
10階建てマンション(耐震構造)10階の室内
震度 7 に相当
屋内の揺れを地表の震度尺度に当てはめた場合の目安。出典:日経クロステック(2026年8月21日)/防災科研によるE-ディフェンス実大振動実験
「地上で震度5強だったから、自分の部屋も震度5強程度」とは限らない、ということです。
POINT 02
実験では、震度6強相当の地震波で固定なしの部屋と固定した部屋を比較しています。固定なしの部屋では家具が大きく倒れて危険な状態になる一方、壁に固定した部屋では結果が大きく変わりました。防災科研の研究員も、市販の固定部品には一定の効果があり、可能な範囲で取り付けた方が望ましいとしています。何もしないより、家具を固定した方がはるかに安全です。
ただし、10階を想定した実験では、家具を固定していても、すべての転倒・移動を防ぐことはできませんでした。
固定していても起きたこと
- 電子レンジを載せた食器棚が倒れる
- 薄型テレビは倒れなかったものの、テレビ台から滑り落ちる
記事でも、振幅が大きくなると家具の固定効果にも限界がありそうだと指摘しています。家具そのものを固定していても、その上に載せた家電まで固定されているとは限りません。「家具を固定したから終わり」ではないということです。
POINT 03
特に注意したいのが、寝室やリビングなど、家族が長い時間を過ごす場所です。記事でも、寝床の近くには背の高い家具を置かない方がよいとしています。「倒れないようにする」だけでなく、「そもそも倒れてくる物を置かない」という考え方です。
特に次のような場所には、背の高い家具や重い家具をできるだけ置かない方が安心です。
- ベッドの横、子どもが寝る場所
- ソファやダイニングテーブルの周辺
- 廊下や出入口の近く
新しく家具を購入するときにも、収納量やデザインだけでなく、「地震のとき、この家具が倒れたらどうなるだろう?」と一度考えてみてください。
POINT 04
見落としやすいのが、キャスター付きの家具やラックです。地震の際、家具は倒れるだけでなく、床の上を大きく移動することがあります。人に衝突したり、避難経路を塞いだりする可能性があります。
ここで大切なのが、車輪の向きです。4つのキャスターがすべて同じ向きにそろった状態でロックをかけても、家具はその向きに沿って滑り出してしまいます。そこで、キャスターの向きを互い違い(斜め)にしてからロックをかけることで、家具そのものが動きにくくなります。
POINT 05
住宅を探していると、「新耐震基準だから大丈夫」「耐震性能が高いから安心」という話を聞きます。もちろん建物の耐震性能は重要ですが、建物が倒壊しないことと、地震の最中に室内で家族が安全に過ごせることは別の問題です。
記事でも、建物の耐震性が向上した現在、家具や什器など建物の構造部分と直接つながっていない部分の安全性が、次の課題として浮上しているとしています。特にマンションでは、建物の耐震性・住んでいる階・家具の高さや配置・固定方法まで含めて考える必要があります。
POINT 06
もう一つ、マンションにお住まいの方に知っておいていただきたいのが、大地震のあと、マンションでは「在宅避難」が基本になるということです。在宅避難とは、避難所へ行かずに自宅にとどまって避難生活を送ることをいいます。
公的資料が示す「在宅避難」の位置づけ
- 東京都では約900万人がマンション等の共同住宅に居住しており、耐震基準を満たしたマンション等は、被害が軽微であれば在宅避難が可能とされています
- 東京都は、耐震性の高い住宅が多い東京において在宅避難は重要かつ有効な選択肢であり、避難生活における肉体的・精神的な負担の軽減につながるとしています
- 板橋区の住民防災組織の手引きでも、「家具類の転倒・落下・移動防止」と「在宅避難生活訓練」が並んで示されています
出典:東京都防災ホームページ「マンション防災」/東京都「避難者生活支援指針」(令和8年3月)/板橋区「防災のすゝめ 地域の助け合い編(地震版)」
ただし、在宅避難ができるかどうかは、建物が無事かどうかだけで決まるわけではありません。建物に被害がなくても、室内で家具が倒れ、ガラスが散乱し、通路が塞がれてしまえば、その部屋で生活を続けることはできません。ケガをしてしまえば、なおさらです。
つまり室内の安全対策は、「地震のときに家族がケガをしない」ためだけでなく、「地震のあとも自宅で暮らし続ける」ための備えでもあるということです。マンションを選ぶとき、そして住み続けるときに、建物の耐震性と同じくらい室内の安全性が大切になる理由がここにあります。
東京消防庁が示す対策の順序
- まず、生活空間の家具類そのものをできるだけ減らす
- 次に、家具のレイアウトを見直す(寝る場所・座る場所には置かない、置くなら背の低い家具にする、避難通路や出入口付近には転倒・移動しやすい家具を置かない)
- そのうえで、器具を使って家具や家電を固定する
出典:東京消防庁「自宅の家具転対策」
「減らす → 配置を考える → 固定する」。この順番で考えると、何から手をつければよいかが見えてきます。
CHECK LIST
- 地震のあとも、その部屋で生活を続けられる状態か(散乱物・通路・扉の開閉)を確認する
- 背の高い家具をできるだけ減らす
- ベッドやソファの近くに背の高い家具を置かない
- 家具を壁などにしっかり固定する
- テレビや電子レンジなど、家具の上に載せている家電も固定する
- キャスター付き家具は、車輪の向きを斜め(互い違い)にしたうえでロックする
- 家具の上に重い物や割れやすい物を置かない
- 家具が倒れたときに出入口を塞がないように配置する
一つの対策だけで完全に安全になるわけではありません。「固定する」「置き方を考える」「危険な家具を減らす」を組み合わせることが大切です。
SUMMARY
住宅の安全性というと、耐震性能や耐震基準だけに注目しがちです。しかし実際の暮らしでは、家具や家電の高さ、置き方、固定方法まで含めて考えて初めて、地震から家族を守れる住まいになるのではないでしょうか。
今回、板橋区でも震度4の揺れを観測しました。これを機会に、「もし、これよりもっと大きな地震が来たら、この家具はどうなるだろう?」という目線で、一度ご自宅の中を見回してみてはいかがでしょうか。