今回は、過去にアメンバー限定で公開していた実際の取引事例を、あらためてご紹介します。
「仲介手数料が安い=お得」とは限らない、という話です。数字で見ると、かなり驚く結果になりました。
数年前、中古マンション(売買価格4,100万円)の取引がありました。
- 売主:宅建業者ではない法人
- 買主:一般の方
- 弊社の立場:買主側の仲介
売主が法人のため、建物部分には消費税がかかります。これは不動産取引の基本的なルールです。
固定資産評価額の按分を確認すると、土地:建物=3:1。これをもとにざっくり試算すると、
【当初の試算】
土地:3,000万円
建物:1,100万円(うち消費税 100万円)
合計:4,100万円
固定資産評価額の按分を参考にする方法は、税務的にも一般的な根拠として使われます。この試算では、消費税はおよそ100万円という計算になりました。
ところが、売主側の仲介業者から「消費税の按分については税理士に確認する」との連絡が入り、しばらく待っていました。
返ってきた結果がこちらです。
【税理士確認後の按分結果】
土地:800万円
建物:3,000万円+消費税300万円
合計:4,100万円(消費税込み)
…えぇ???
建物価格が1,100万円から3,300万円へ。消費税だけで100万円→300万円に跳ね上がっています。
今回は買取再販でもなく、リフォームも行っていない、ごく普通の中古マンション取引です。固定資産評価額の按分を参考にすれば、建物の比率がここまで高くなる合理的な根拠はありません。
売主が本来払わなくてよかった消費税を、約200万円余分に負担することになった計算です。
念のため、売主側の仲介業者さんに伝えました。「固定資産評価額の按分を参考にすれば、もっと建物価格を低く設定できる可能性がありますよ。税理士に確認しないんですか」と。
返ってきた答えは、「こちらからは指摘しません」との回答。
税理士に確認すれば、売主の負担が大きく変わっていた可能性があります。それを伝えないまま、契約は成立しました。
さらに驚いたのが、売主側の仲介業者さんの仲介手数料です。
その業者さんは仲介手数料の割引・無料を売りにしているところで、ホームページには「今回の取引価格では通常より約10万円お得!」と書いてありました。
でも、消費税で200万円損しているんです。
仲介手数料は確かに10万円ほど安くなったかもしれない。しかし、按分の見直しによって抑えられたかもしれない消費税が200万円も上乗せされた。差し引きで、売主は約190万円も損してます。
今回の取引をまとめると、こうなります。
- 売主:消費税を200万円余分に負担
- 買主:仲介手数料がやや安い(唯一、少し得をした立場)
- 売主側仲介:手数料収入が通常より少ない
- 弊社:手数料収入が通常より少ない
- 税務署:消費税を余分に受け取る
買主だけは仲介手数料が少し安くなりましたが、売主・仲介業者は得をしていません。余分な消費税が税務署に流れただけです。
私が売主の担当だったなら、間違いなく伝えます。「固定資産評価額の按分を使う方法があります。税理士に確認してもらえますか」と。それだけで、売主の手取りが大きく変わるかもしれない。
仲介の仕事は、手数料を安くすることではありません。依頼者にとって最良の結果を出すことです。
「手数料が安い=本当にお得」ではない
仲介がどれだけ丁寧に動くか。それが最終的な手取りの差につながります。手数料の金額だけで仲介業者を選ぶのは、大切な部分を見落とすリスクがあります。
売主はこの件を知らないまま取引は終わりました。特にトラブルにはなっていません。でも、「もったいないな」という気持ちがずっと残っています。
不動産の売却を検討されている方に、この事例が少しでも参考になれば幸いです。



