No.3355 特定のマイホームを買い換えたときの特例(課税の繰り延べ)
概要
●10年以上所有・居住したマイホームを令和7年12月31日までに売却して、新たな自宅を買い換えた場合、いったん発生した譲渡益に対する課税を将来に繰り延べできる特例。
●売却時点で譲渡益は課税されない(非課税ではなく、先送り)。
主な適用要件
●売却代金が1億円以下で、国内の不動産であること。
●所有期間・居住期間がともに10年以上。
●売却相手が特別関係者でない。
●過去2年以内に3,000万円特別控除・軽減税率などを受けていない。
●買い換え先は 床面積50㎡以上、土地500㎡以下など条件あり。
●売った前年~翌年の3年内に買い換え、取得後一定期限までに居住すること。
●新築住宅の場合は、一定の省エネ基準等を満たす家屋に関する注意点あり。
申告時の注意
●売却・購入ともに契約書・登記証明書などの添付が必要。
●将来、その買い換えた家を売却する際には、今回繰り延べた分を含めて課税対象となる。
No.3358 売った金額より少ない金額でマイホームを買い換えたとき
概要
●新居の購入額<旧居の売却額の場合、差額分は譲渡所得として課税が生じる。
計算イメージ
収入金額 = 旧居の売却額-新居の購入額
必要経費 = (旧居の取得費+譲渡費用) × (収入金額÷売却額)
譲渡所得 = 収入金額-必要経費
▼併せて読んでほしい記事▼
No.3370 マイホームを買い換えた場合に譲渡損失が生じたとき(損益通算・繰越控除)
概要
●自宅を売って損失が出た場合、令和7年12月31日まで に一定の条件で新たなマイホームを買い換えると、その譲渡損失を給与所得など他の所得と通算でき、控除しきれない部分は最大3年間繰り越し可能。
●買い換え先の住宅ローンが10年以上あること。
主な適用要件
●売却した旧居宅の所有期間が5年超であること。
●住まなくなって3年以内 に売却すること(家屋の取壊し・被災した場合などにも条件あり)。
●新たに買った家屋が国内にあり、床面積50㎡以上、かつ取得から一定期間内に居住すること。
●新居について償還期間10年以上の住宅ローンを有していること。
●親子・夫婦など特別関係者への売却でない こと。
繰越控除の制限
●合計所得金額が3,000万円超の年は繰越控除ができない。
●敷地面積が500㎡超の部分は除外など細かな要件あり。
申告時の注意
●確定申告が必要。
●売却契約書や登記事項証明書、ローン残高証明書など 多くの添付書類が必要。
No.3390 住宅ローンが残っているマイホームを売却して譲渡損失が生じたとき(損益通算・繰越控除)
概要
●令和7年12月31日までに、ローン残高より低い金額で自宅を売って譲渡損失が生じた場合、損益通算や繰越控除が可能。
●新たなマイホームを購入しない場合でも適用可(買い換え不要)。
主な適用要件
●売却したマイホームの所有期間が5年超であること。
●売買契約日の前日において、残債10年以上の住宅ローンがあること。
●売却先が特別関係者でないこと。
●売却額がローン残高を下回ること。
●過去2年以内に3,000万円特別控除や買換え特例などを受けていないこと(同様の損失特例とも重複適用不可)。
繰越控除
●翌年以後3年まで 損失を繰り越せる。
●合計所得金額が3,000万円超となる年は繰越控除不可。
申告時の注意
●確定申告必須。
●住宅ローン残高証明書、登記事項証明書など必要書類が多い。
No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例(3,000万円特別控除)
概要
●相続または遺贈により取得した被相続人の居住用家屋(いわゆる “空き家”)を、一定の要件のもと 3,000万円(相続人が3人以上の場合は2,000万円)まで譲渡所得から控除可能な特例。
●適用期間:平成28年4月1日~令和9年12月31日までに売却した場合。
主な適用要件
●被相続人が一人で住んでいた家屋(老人ホーム入所など例外もあり)。
●※昭和56年5月31日以前に建築、区分所有建物でないこと。
●相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却。
●売却代金が1億円以下。
●相続してから売却まで事業や賃貸・居住に使っていないこと。
●他の特例(相続財産を譲渡した場合の取得費加算など)との重複不可。
●特別関係者への売却でない こと。
※売り方(家のまま売る or 解体してから売る)によって異なる要件。
大きく分けて下記3パターンのいずれかに当てはまる必要があります。
(イ) 家をそのまま売る場合
家屋 (または家屋+敷地)を相続したままの状態で売る。その際、家屋・敷地について、相続の時から売却まで事業に使ったり、誰かに貸したり、自分が住んだりしていないこと(=完全な空き家状態)。売却時点で 一定の耐震基準 を満たしていること(旧耐震なら耐震リフォームしている等)。
(ロ) 家を解体して更地にしてから売る場合
相続した家屋を解体し、土地だけを売る。この場合、家屋は「相続から解体まで」使っていない(事業用や賃貸用、居住用にしていない)、敷地についても「相続から売却まで」使っていないこと。
解体後から売るまでの間、駐車場など他の構築物を建てていない(“更地”のまま)といった状態であることが要件となります。
(ハ) 売却時には耐震基準を満たしていないが、売却後、翌年2月15日までの間に耐震リフォーム・解体等を行う場合(令和6年1月1日以降)は、売却自体は家が旧耐震のままでも、売却日から翌年2月15日までに耐震リフォーム完了(または全部解体)すれば要件を満たします。
申告時の注意
●確定申告必須。
●市区町村長が発行する「被相続人居住用家屋等確認書」 など、書類の添付が必要。
No.3307 被相続人が老人ホーム等に入所していた場合の被相続人居住用家屋
概要
●被相続人が要介護認定等で老人ホーム等へ入所していたために、相続開始直前には実際に居住していなかった空き家でも、一定要件を満たせば被相続人居住用家屋(空き家特例の対象)とみなされる。
主な適用要件
●要介護・要支援認定などを受けた被相続人が、特定の老人ホーム等に入所していたこと。
●被相続人が居住しなくなった後も、家屋は被相続人の私物保管などに供されていただけで、事業や賃貸、人の居住などに使っていないこと。
●昭和56年5月31日以前に建築、区分所有建物でない、被相続人以外に住んでいた人がいないなど、空き家特例の基本要件を満たすこと。
最後に
これらの特例は併用不可のものが多いため、どの特例を利用するか慎重に確認が必要です。特例適用には確定申告が必須であり、要件不備や書類不足で認められないケースもあります。
条件や期限は法改正などで変更される場合があるため、最新の国税庁ウェブサイトや税理士等の専門家 へ確認することを強くおすすめします。