兄弟の共有名義にして
大丈夫?
数字の上では公平でも、売る・貸す・直すのすべてに他の共有者の判断が必要になります。「公平に分けたつもり」が、決められない状態を招くことがあります。
- とりあえず兄弟で2分の1ずつ相続登記をしたが、その後の話が進んでいない
- 自分は売りたいが、他の兄弟が「まだ売りたくない」と言っている
- 兄が実家に住み続けており、固定資産税だけ請求される
- 誰も住んでいないのに、固定資産税と管理の負担だけが続いている
- 持分だけを買い取るという業者から連絡が来た
- 相続から数年が経ち、話し合いのきっかけを失っている
▼
共有名義そのものが悪いわけではありません。問題は、管理方法・費用負担・将来の出口(売却の時期と方法)を決めないまま登記だけを済ませてしまうことです。
相続不動産の共有は、時間が経つほど関係者が増え、解消が難しくなります。まずは「今の不動産がいくらで、どんな条件なら売れるのか」という数字を共有することから始めてください。
民法第898条第1項は、相続人が複数いる場合、相続財産は相続人全員の共有になると定められています。つまり、遺産分割協議で「誰が実家を取得するか」が決まるまでは、実家は原則として相続人全員で共有している状態です。
法定相続分どおりに共有登記をすることと、相続問題が解決することは別です。長男と長女が2分の1ずつ登記しても、次の判断はすべて先送りされたままです。
- 誰が住むのか
- 固定資産税、火災保険、修繕費を誰が負担するのか
- 空き家になる場合、誰が管理するのか
- いつ、いくらで売却するのか
- 売却せず賃貸にするのか
- 兄弟の一方が亡くなったとき、その持分を誰が引き継ぐのか
共有名義の土地・建物を一体で売却するには、共有者全員の同意が必要です。一人でも「もう少し待ちたい」、「親の家を残したい」と反対すれば、全体を売ることはできません。
自分の持分だけなら単独で売れます。ただし買主は不動産を自由に使えないため、共有持分を扱う専門事業者が買主となり、全体を売って分けた場合の金額を下回ることが少なくありません。
住んでいる人は「自分が管理している」と考え、住んでいない人は「財産を無償で使われている」と感じます。使う人・負担する人・所有する人が一致しないことが、共有の構造的な難しさです。
共有者の一人が亡くなれば、その持分は配偶者や子へ相続されます。遠方の方や面識の薄い親族が加わるほど、意思確認と合意形成は難しくなります。
法令上の枠組み
民法第251条第1項は、形状または効用の著しい変更を伴う「変更」には共有者全員の同意を要すると定めます。民法第252条第1項は、管理に関する事項(著しい変更を伴わない軽微な変更を含む)は持分価格の過半数で決すると定めます。同条第4項では、建物は3年、土地は5年を超えない期間の賃貸借であれば管理行為として過半数で決められるとされています(借地借家法により更新が予定される賃貸借は除きます)。
長男は住み続けたい、長女は自宅の住宅ローン返済のため売却したい、という希望の食い違いがありました。
査定価格が8,000万円でも、長男が長女の持分(4,000万円相当)を買い取る資金を用意できなければ単独所有にはできません。長女が持分だけを売ろうとしても、全体価格の2分の1で売れるとは限りません。結果として、住み続けたい長男も、現金化したい長女も、どちらの希望もかなわない状態が続きました。
自宅を相続した長男が、預貯金だけでは代償金が不足したため金融機関から借入れを行い、妹へ代償金を支払って単独名義としました。
この場合、代償金の額と支払方法を遺産分割協議書に明記することが必要です。記載が不十分だと税務上は贈与と扱われるおそれがあるため、協議書の文言は税理士へご確認ください。
登記持分の数字をそろえることが公平ではありません。受け取る財産・負担する費用・将来の換金しやすさまで含めて公平かという視点で比較してください。
価格と条件がわかると、兄弟の話し合いは進みやすくなります。売却のご依頼を前提としたご相談ではありません。
電話で相談する 03-5248-6228 無料でメール相談する| 方法 | 内容 | 主なメリット | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 現物分割 | 特定の相続人が不動産を取得する | 単独名義となり、管理や売却を決めやすい | ほかの財産との価値に差があると調整が必要 |
| 代償分割 | 不動産を取得した人が、ほかの相続人へ金銭を支払う | 実家を残しながら共有を避けられる | 代償金を支払う資力が必要。金額や支払方法は遺産分割協議書に明記することが重要 |
| 換価分割 | 不動産を売却し、その代金を相続人で分ける | 現金で分けるため公平に調整しやすい | 売却時期・価格の合意と、譲渡所得税の検討が必要 |
| 土地の分筆 | 土地を分筆し、それぞれの相続人が単独で取得する | 土地を残しつつ共有を解消できる場合がある | 接道、間口、最低敷地面積、建築計画などの検討が必要 |
土地の価格は、接道条件、間口、形状、建築できる建物の規模、私道持分、セットバック、地区計画などで変わります。板橋区内でも、分割後の一方が狭小地や旗竿地となり、分ける前より合計価値が下がる例があります。
さらに注意が必要なのが、最低敷地面積の規制により、そもそも土地を分割できない場合があるという点です。建築基準法第53条の2では、都市計画や地区計画などで建築物の敷地面積の最低限度が定められている区域において、その限度を下回る敷地では建築ができないとされています。分割後の各土地がこの限度を下回ると、建物を建てられない土地になってしまうため、分筆自体が現実的な選択肢になりません。板橋区も敷地面積の最低限度が定められておりますので、分割を検討する際は、事前に区の都市計画情報でご確認ください。
分筆案を決める前に、建築(何が建てられるか)と売却(いくらで売れるか)の両面から検討してください。
2024年4月1日から相続登記が義務化され、不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に申請が必要です。義務化前に発生した相続も対象で、正当な理由なく怠った場合は10万円以下の過料の対象となります。協議がまとまらない場合は「相続人申告登記」により申請義務を履行したものとみなされます。
相続した空き家を売却する場合、一定の要件を満たせば譲渡所得から最高3,000万円を控除できます。国税庁の解説による主な要件は次のとおりです。
- 昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること(区分所有建物を除く)
- 相続の開始の直前において被相続人が居住していた家屋であること
- 相続時から売却時まで、事業・貸付け・居住の用に供されていないこと
- 売却代金が1億円以下であること
- 耐震基準に適合するようリフォームして売却するか、家屋を取り壊して売却すること(令和6年1月1日以後の譲渡では、譲渡の年の翌年2月15日までに買主が耐震改修または取壊しを行った場合も対象)
- 特例の適用期限は令和9年(2027年)12月31日までの譲渡
相続人が3人以上いる場合、控除額の上限は1人当たり2,000万円となります。共有者間の話し合いが長引くと、使えたはずの特例の期限を過ぎてしまいます。
相続によって不動産が兄弟などの共有になった場合、その共有状態は、原則として通常の「共有物分割」ではなく、「遺産分割」の手続で解消します(民法第258条の2第1項)。
つまり、父が亡くなり、兄弟3人で実家を相続した場合には、単に「3人の共有物だから土地を3つに分けよう」とするのではなく、預貯金などほかの相続財産も含めて、遺産分割協議によって「誰が実家を取得するのか」「売却して代金を分けるのか」などを決めるのが原則です。
ただし、相続開始から10年を経過すると、一定の要件のもとで、遺産共有となっている持分について通常の「共有物分割」の手続を利用できる場合があります(民法第258条の2第2項)。もっとも、10年経てば必ず共有物分割で解決できるというわけではなく、遺産分割の請求がされ、相続人から所定の異議が出された場合などには利用できません。
また、相続開始から10年を経過した後の遺産分割では、原則として、生前贈与などの「特別受益」や、親の介護などによる「寄与分」を反映した具体的相続分ではなく、法定相続分または遺言で指定された相続分を基準に分けることになります(民法第904条の3)。
たとえば、兄だけが父から生前に多額の援助を受けていたり、弟が長年父の介護をしていたりしても、何もしないまま10年が経過すると、こうした事情を遺産分割の取り分に反映できなくなる可能性があります。
「そのうち兄弟で話し合えばいい」と遺産分割を先送りことには、このようなリスクがあります。
一方、遺産分割が終わった後に不動産を複数人の共有とした場合は、話が変わります。
たとえば、遺産分割協議によって「実家は兄と弟が2分の1ずつ取得する」と決めた場合、その後は相続手続上の「遺産共有」ではなく、通常の共有関係となります。
通常の共有では、各共有者は原則としていつでも共有物の分割を求めることができます(民法第256条第1項)。共有者同士の話し合いで分割方法が決まらない場合には、裁判所へ共有物分割を請求することができます(民法第258条)。
裁判所は、土地そのものを分ける「現物分割」や、一人が不動産を取得して他の共有者へ金銭を支払う方法などを検討し、それらによる分割が困難な場合には、不動産を競売して代金を分ける方法をとることがあります。
さらに、共有者の一人が行方不明で話し合いができない場合には、一定の要件のもと、裁判所の手続を利用して、その所在不明者の持分を取得する制度(民法第262条の2)や、不動産全体を第三者へ売却するため、所在不明者の持分を譲渡する権限を得る制度(民法第262条の3)も設けられています。民法262条の2については、相続財産に属する持分の場合、原則として相続開始から10年を経過していなければ利用できないという制限もあります。
- 不動産の現状を整理する
登記、接道、境界、建物状況、利用状況、固定資産税額、修繕の必要性を確認します。 - 売却価格と手取り額を把握する
査定額だけでなく、測量費、解体費、仲介手数料、譲渡所得税を差し引いた概算手取り額を出します。 - 売却・居住・賃貸を数字で比較する
保有し続ける場合の維持費や賃料収入も並べ、「売る・売らない」の二択にしないことが大切です。 - 当事者だけで難しければ専門家を入れる
法律は弁護士、登記は司法書士、税務は税理士、価格と売却条件は不動産会社へ、論点ごとに確認します。
遺産分割の話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所の遺産分割調停を利用できます。裁判所の説明によれば、調停では調停委員会が双方から事情を聴き、必要に応じて資料の提出や遺産の鑑定を行いながら合意を目指します。調停が不成立となった場合は、原則として審判手続へ移行します。ただし、裁判手続に進む前に、価格・分割の可否・売却条件を数字で整理するだけで話し合いが動き出す例も多くあります。
住宅の設計・施工管理・仕入れに約400棟携わってきました。建物の状態、解体の要否、リフォーム費用まで踏まえて売却方針をご提案します。
板橋区・北区・練馬区を中心に、路線・エリアごとの相場と買主層の違いを把握しています。接道、私道、セットバック、分筆の可否などを確認したうえで判断します。
他社からの購入希望も正しくお取り次ぎします。共有者全員が納得できるよう、販売状況と反響は包み隠さずご報告します。
「まだ相続前」、「兄弟で意見がまとまっていない」段階でも構いません。現在の価値と選択肢の整理からお手伝いします。
Q. 兄弟のうち一人が反対しています。相談してもよいですか。
A. はい。全員の合意がない段階でのご相談も承ります。まず価格と条件を客観的な数字で示すことで、話し合いの前提を共有できます。
Q. 持分だけを売るよう業者から勧められています。
A. 持分の売却は可能ですが、全体を売って分けた場合より手取りが減りやすく、残る共有者と第三者との協議が必要になります。判断前に、全体売却や代償分割と比較することをおすすめします。
Q. まだ相続は発生していませんが、相談できますか。
A. 相続前のご相談がもっとも選択肢が多く残ります。遺言、生命保険、住み替え、生前売却、家財整理、境界確認まで含めて準備できます。
Q. 相談は無料ですか。
A. ご相談と価格のご提示に費用はいただきません。測量や解体などの実費が必要な場合は、事前に金額をご説明します。
富士屋不動産へご相談ください
相続の話し合いには、法律上の相続分だけでなく、その不動産が実際にいくらで、どんな条件なら売れるのかという情報が必要です。
まだ相続前の方、兄弟で意見がまとまっていない方、持分の売却を検討している方も、まずは現在の価値と選択肢の整理からお手伝いします。
東京都板橋区仲宿48-10
営業時間 9:30〜18:30/定休日 毎週水曜日・第1・第3火曜日
参考資料
- 民法(e-Gov法令検索)/第251条、第252条、第256条、第258条、第258条の2、第262条の2、第262条の3、第898条、第904条の3、第907条
- 相続登記の申請義務化に関するQ&A(法務省)
- 相続人申告登記について(法務省)
- 遺産分割調停(裁判所)
- No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例(国税庁)
- 関連記事:耐震基準適合証明書と不動産取得税の軽減について
※本記事は一般的な制度と不動産実務を説明するものであり、個別案件に対する法律・税務上の助言ではありません。具体的な手続や税額の判断は、弁護士・司法書士・税理士などの専門家へご相談ください。



