国保と社保、それぞれの影響をわかりやすく解説
不動産の売却益(譲渡所得)に所得税がかかることは、多くの方がご存知だと思います。
ただ、確定申告が終わってひと安心したあとに、翌年の健康保険料の請求書が届いて「え、こんなに上がるの?」となる方もいるかもしれません。
所得税の話はよく出てきますが、健康保険料への影響はあまり語られません。今回はそこを整理しておきます。
会社員(社会保険)の方:保険料は原則変わらない
会社員・公務員が加入する健康保険の保険料は、毎月の給与をベースにした「標準報酬月額」で決まります。不動産の売却益は給与ではないため、本人の保険料には影響しません。
扶養に入っている家族(無職の配偶者や親など)が不動産を売った場合は、加入している保険組合によって取り扱いが異なることがあります。心配な方は事前に保険組合へ確認しておくと安心です。
国民健康保険(国保)の方:翌年の保険料が上がる可能性がある
自営業者・退職者・無職の方が加入する国民健康保険は、前年の所得をもとに翌年の保険料が決まります。
不動産の売却益は「分離課税」のため、所得税の計算では他の所得と合算されません。ただし、国保料の計算では総所得に含まれます。つまり、売却益が出た翌年は、保険料が大きく上がる可能性があります。
上限(賦課限度額)はある
国保料には上限が設けられており、2026年度の上限は年齢により異なります(介護分対象外の65歳以上:96万円、介護分対象の40〜64歳:113万円)。どれだけ譲渡益が大きくても、1年間の保険料がこれを超えることはありません。
とはいえ、96万円・113万円いずれも決して小さな金額ではありません。売却前に増加分の資金を確保しておくことが大切です。
3,000万円特別控除(マイホーム特例)は国保料にも効く
マイホームを売った場合、要件を満たせば譲渡益から最大3,000万円を控除できる特例があります。この特例は所得税だけでなく、国保料の計算にも有効です。控除後に譲渡所得がゼロになれば、保険料への影響もありません。
配偶者控除・配偶者特別控除への影響にも注意
国保料や譲渡税がゼロになっても、売主本人の合計所得金額が1,000万円を超えると、配偶者控除・配偶者特別控除が使えなくなります。これは被扶養者(配偶者)側の所得の話ではなく、売主自身の所得が基準額を超えることによるものです。
例えば、通常年の所得が800万円の方が譲渡益1,000万円を得た場合、合計所得は1,800万円となり、その年は配偶者控除・配偶者特別控除がいずれも適用できません。影響は売却した年の確定申告1回分ですが、見落としやすいポイントです。
なお、この保険料の増加は売却した翌年の1年間だけです。再来年からは元の水準に戻ります。
板橋区の国民健康保険料 計算方法(令和8年度)
国民健康保険料は、下表の区分「(1)医療分 (2)支援金分 (3)介護分 (4)子ども分」それぞれにおいて均等割額と所得割額を計算し、合計して算出します。また、世帯単位で計算します。
令和8年度 年間保険料(2026年4月分から2027年3月分の保険料)
| 区分 | 均等割額(注1) | 所得割額(注2) | 世帯の最高限度額 |
|---|---|---|---|
| (1)医療分 | 47,600円 ×世帯の加入者数 |
世帯の加入者全員の令和7(2025)年中の基礎所得金額(注3)×7.51% | 67万円 |
| (2)支援金分 | 17,600円 ×世帯の加入者数 |
世帯の加入者全員の令和7(2025)年中の基礎所得金額(注3)×2.80% | 26万円 |
| (3)介護分 (40歳から64歳の方のみ) |
17,800円 ×世帯の40歳から64歳の加入者数 |
世帯の40歳から64歳の加入者全員の令和7(2025)年中の基礎所得金額(注3)×2.43% | 17万円 |
| (4)子ども分(注5) | ①1,800円×世帯の加入者数 ②73円×世帯の18歳以上の加入者数 |
世帯の加入者全員の令和7(2025)年中の基礎所得金額(注3)×0.27% | 3万円 |
(注1)均等割額は加入者数に応じてかかる定額部分です。
(注2)所得割額は前年の所得に応じてかかる部分です。
(注3)基礎所得金額=前年の総所得金額等-基礎控除43万円
計算例①:板橋区・67歳夫婦2人世帯、年金所得180万円+譲渡益500万円
実際に板橋区の令和8年度(2026年度)保険料率で計算してみます。67歳は介護分(40〜64歳のみ)の対象外です。
国保料の所得割は「基礎所得金額(=総所得-基礎控除43万円)」に料率を掛けて計算します。
売却なし:基礎所得金額 180万円-43万円=137万円
| 区分 | 均等割 | 所得割 | 小計 |
|---|---|---|---|
| 医療分 | 47,600円×2人=95,200円 | 137万円×7.51%=102,887円 | 198,087円 |
| 支援金分 | 17,600円×2人=35,200円 | 137万円×2.80%=38,360円 | 73,560円 |
| 子ども分 | (1,800+73)円×2人=3,746円 | 137万円×0.27%=3,699円 | 7,445円 |
| 年間保険料合計 | 約28万円 | ||
売却あり(譲渡益500万円):基礎所得金額 (180万円+500万円)-43万円=637万円
| 区分 | 均等割 | 所得割 | 合計 | 上限 |
|---|---|---|---|---|
| 医療分 | 95,200円 | 637万円×7.51%=478,387円 | 573,587円 | 67万円 |
| 支援金分 | 35,200円 | 637万円×2.80%=178,360円 | 213,560円 | 26万円 |
| 子ども分 | 3,746円 | 637万円×0.27%=17,199円 | 20,945円 | 3万円 |
| 年間保険料合計 | 約81万円(+53万円) | |||
※保険料率は板橋区令和8年度のものです。他の自治体では異なります。
各区分の合計(573,587円+213,560円+20,945円)は808,092円で、年間保険料は約81万円(売却なしの約28万円から+53万円)となります。なお、今回の例では各区分はいずれも上限には達していません。
計算例②:板橋区・60歳単身、他の所得なし、譲渡益1,000万円
60歳は介護分(40〜64歳)の対象です。他の所得がない場合を想定します。
基礎所得金額 = 1,000万円 - 43万円 = 957万円
| 区分 | 均等割 | 所得割 | 合計 | 上限 |
|---|---|---|---|---|
| 医療分 | 47,600円 | 957万円×7.51%=718,707円 | 766,307円 | 67万円 |
| 支援金分 | 17,600円 | 957万円×2.80%=267,960円 | 285,560円 | 26万円 |
| 介護分 | 17,800円 | 957万円×2.43%=232,551円 | 250,351円 | 17万円 |
| 子ども分 | (1,800+73)円=1,873円 | 957万円×0.27%=25,839円 | 27,712円 | 3万円 |
| 年間保険料合計 | 1,127,712円(約113万円) | |||
※保険料率は板橋区令和8年度のものです。他の自治体では異なります。
60歳は介護分が加わるため、医療分・支援金分・介護分の3区分が上限に到達し、子ども分(27,712円)は上限3万円に届かず実額となります。合計(670,000円+260,000円+170,000円+27,712円)は1,127,712円、約113万円です。
まとめ
| 加入している保険 | 譲渡所得の影響 |
|---|---|
| 社会保険(会社員・公務員) | 本人は原則影響なし |
| 国民健康保険(65歳・67歳など介護分対象外) | 翌年の保険料が増加。上限は96万円(板橋区2026年度) |
| 国民健康保険(40〜64歳・介護分あり) | 翌年の保険料が増加。上限は113万円(板橋区2026年度) |
不動産の売却は所得税だけでなく、健康保険料など翌年の社会保険コスト全体に影響することがあります。特に国保加入の方は、売却前にトータルでシミュレーションしておくことをおすすめします。
詳しい保険料の試算は、税理士や各市区町村の窓口にご相談ください。
※本記事の保険料計算は板橋区令和8年度(2026年度)の料率をもとにした概算です。保険料率は市区町村・年度によって異なります。正確な金額はお住まいの自治体窓口または税理士にご確認ください。








