民法234条では、隣家との建物の間隔を外壁や出窓から有効で50センチ以上確保することが定められています。しかし、土地価格が高い都市部や狭小地の分譲住宅では、隣棟間隔を民法の規定より狭くする合意書が締結されるケースが見られます。今回は隣棟間隔が狭すぎる家の注意点についてお伝えします。
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メンテナンスや修繕工事の問題
隣棟間隔が狭い場合、自己の敷地内だけで足場の設置が難しく、お隣の敷地をお借りする必要が想定されます。足場の設置ができない場合は建物の維持管理や修繕が難しくなることがあります。
たとえば、敷地境界線まで50センチ未満でもお隣と合わせて50~60センチ程度確保できれば、ぎりぎり足場を設置できる場合があります。しかし、これより狭い場合は足場の設置はできたとしても、修繕工事が大変になり費用もかさむ可能性があります。
エアコン室外機の設置問題
隣棟間隔が極端に狭いと、エアコンの室外機を自分の敷地内に設置するスペースが確保できず、エアコン室外機が越境する形で隣家のスペースに配置されることを容認する契約がある建売住宅も見受けられます。このような状況は後々のトラブルの原因になり得ます。
将来の建て替え時のリスク
隣棟間隔が狭い場合、将来建物を建て替える際にもさまざまな課題が生じる可能性があります。
地盤改良の撤去
地盤が弱く、柱状改良などの地盤改良を行っている場合、建て替え時には既存の柱状改良を撤去する必要があります。しかし、隣棟間隔が狭すぎたり、前面道路が狭い場合、重機を用いた撤去作業が難航する可能性があります。
新築時には2~3棟分の広い敷地を活用して工事を行えますが、建て替え時に1棟分だけの敷地で作業するとなると、撤去が困難になるケースもあります。
実際にあった事例
ある狭小敷地で、地中に深さ約5mもの改良体が残っていました。土地売却にあたり、改良体の撤去を予定しておりましたが、前面道路が狭く大型の重機が入れないうえ、隣家は木造住宅が建っていたため、撤去工事の際の振動による影響が懸念されました。結果として改良体の撤去は断念せざるを得ず、この土地は隣地の方に現況のまま買い取っていただく形となりました。将来的に隣家の方が建物を建て替える際にあらためて改良体を撤去することを前提に、通常より安い価格で売却しなくてはならなかったのです。
このように、建て替えや土地の売却時に杭や改良体の撤去が必要になると、狭小地や道路幅の問題、周辺環境(古い木造住宅があるなど)によって撤去工事が難航し、思わぬ出費や売却条件の制約を抱える可能性がある点には十分注意しましょう。
六価クロムなどの土壌汚染リスク
柱状改良を行う際、使用するセメント系固化材と土質との相性を確認する試験を実施し、六価クロムの溶出量が規定値以下であることを確認することが推奨されています。しかし、民間工事では六価クロム溶出試験は義務ではないため、将来的に土壌汚染の原因となり、撤去や処理に高額な費用が発生する可能性があります。撤去時に六価クロムが検出された場合には、特別な処理が必要となります。
まとめ
隣棟間隔が狭い物件は、購入時の価格が魅力的であっても、長期的な維持管理や建て替え時に予想外のコストやトラブルが発生するリスクがあります。家の購入を検討する際は、「安物買いの銭失い」にならないよう、将来的なリスクを十分に理解した上で慎重に判断してください。
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