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不動産ポータルサイトによく「ワンランク上の設備」、「ワンランク上の仕様」、「ワンランク上の生活」などワンランク上の〇〇というワードが掲載されています。
確かに高級感があって機能性の高いキッチン、ユニットバス、玄関ドアや床暖房など賃貸物件にはないグレードの設備や仕様をみると、ワンランク上の生活が出来そうと思うかもしれません。
賃貸住宅の場合はオーナーの利回りや収支計画を重視して建築されていて、居住者のことはあまり考えられていないのが実情ですので、賃貸と分譲の設備、仕様を比べると相応の差があるのは仕方がないように思います。
今払っている家賃と変わらない金額、若しくは少し支払額が上がるだけでワンランク上の設備がついて、ワンランク上の生活ができるのであれば、建売住宅を買おうと思ってしまう気持ち、実際に私が同様の経験をしていますのでよく分かります。
家を買うとき先ずは予算、立地、間取りから探し始め、希望の物件が見つかれば買ってしまうという方が多いように思いますが、同じ建売住宅というカテゴリーでも設備、仕様にコストを掛けた家と設備はボチボチで構造躯体や断熱性能にコストを掛けた家、どちらも程々にバランスよくコストを掛けた家が混在します。
稀にコストをギリギリまで抑えたダメな家もあります。
「大地震が起きても大丈夫ですか?」と質問してみましょう。
どんな方でも、買おうと思っている家の耐震性能は気にされる方が多いと思われますが、営業スタッフに「この家、大地震が起きても大丈夫ですか?」と質問してみてください。
営業スタッフから「建築基準法を守っているから大丈夫ですよ~」と説明された際、この大丈夫とは、下に記載した中のどのレベルで大丈夫だと受け取りますか?
1.震度7の地震が起きてもビクともしないレベル。
2.外壁などに亀裂が入るけど補修すれば住むことが出来るレベル。
3.建物が傾いて大規模な補修をしないと住めないレベル。
4.倒壊はせず逃げ出すことはできたけど、建て替えが必要なレベル。
多くの方は1.のビクともしないレベルと受け取っているのではないでしょうか。
建築基準法の第一条には下記のように記載があります。
第一条 この法律は、建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定めて、国民の生命、健康及び財産の保護を図り、もつて公共の福祉の増進に資することを目的とする。
建築基準法は最低の基準を定めているだけですので、例えば震度7の大地震が起きた場合、4の倒壊はしなかったけど建て替えが必要なレベルでOKということです。
上記の質問、知識があって良心的な営業スタッフであれば、「建築基準法は震度7の大地震が起きた際には建物が倒壊しないレベルです」と答えてくれると思います。
物件によって大きく異なる断熱性能
平成11年(1999年)に次世代省エネルギー基準が規定されて以来、長いこと省エネ等級4(現在は断熱等級4)が最高等級とされていましたが、令和4年4月に断熱等級5、10月に等級6、7が新設され、令和7年(2025年)度以降は全ての新築建物で断熱等級4基準の適合が義務化されます。国土交通省の調査によると、小規模住宅における省エネ基準(断熱等級4)の適合率は約9割とされていますが、建売住宅に限ってみると適合した物件は半分ほどしかないのではないかと考えます。
国の義務化に先立ち、令和4年10月にフラット35S省エネタイプの基準が改訂され最低でも断熱等級4の性能が必須になり、令和5年(2023年)4月からはフラット35の基準が断熱等級4を満たさなければなりませんので、これからの建売住宅においても等級4を満たす物件が供給されるものと思われます。
また、東栄住宅さんや一建設さんなどのパワービルダーにおいては、断熱等級5の物件を供給し始めております。
それでは、断熱等級の高い家を買うとどんなメリットがあるのでしょう。
1.光熱費が安くなる。
皆さんも最近の電気代、ガス代が高騰していることはご存じだと思いますが、断熱性能の高い家は、冬であれば暖房で温めた空気が外へ逃げにくくなり、夏は外の暑い空気が室内に入りにくくなるので、省エネで光熱費が安くなります。
断熱性能別に光熱費のシミュレーションがありますので、後段で説明します。
2.お部屋ごとの温度差が少なく、家のどこにいても快適に過ごせます。
断熱性能の低い家の場合はリビングで暖房を付けていても、暖房のないお部屋、特に廊下、洗面脱衣室やトイレはとても寒く、不快でヒートショックの要因の一つにもなりえます。
令和7年(2025年)に義務化される断熱等級4も決して高断熱というものではなく、最低限必要なレベルだと考えますが、その最低限の等級4にすらなっていない低断熱の家がまだまだ新築で分譲されています。
低断熱の家は、冷気が床付近へと下がって行き床が冷たく、呼吸する空気も冷たいので、小さいお子様にとっては過酷な環境になってしまいます。
下にあるサーモ写真は東京大学 前准教授が撮影された断熱等級4の家になりますが、窓や床付近が冷たく、暖房付近だけは暖かくなっていますが、少し離れたキッチンの床が温まっていないことが分かりますね。
下のサーモ写真は断熱等級6の家になりますが、断熱性能の高い家であれば暖房で温めた熱が外へ逃げにくくなり、さらに気密性を高めれば床付近も温まりますので、家のどこにいても快適で穏やかに暮らすことができます。
断熱性能別の電気代
青森県むつ市の「菊池組」社さんが、断熱性能別の年間暖房負荷、冷房必須期間の冷房負荷を計算してくれていますので、その数値をもって電気代を計算してみました。
前提条件などの詳細は菊池さんが上げられたブログをご参照ください。
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| 年間暖房負荷 | 冷房必須期間の 冷房負荷 | 年間電気代 (35円/kWh) |
断熱等級4 | 57.5kWh/㎡ | 25.0kWh/㎡ | 346,500円 |
断熱等級5より少し高断熱 | 34.3kWh/㎡ | 22.9kWh/㎡ | 240,240円 |
断熱等級6 | 21.1kWh/㎡ | 21.7kWh/㎡ | 179,760円 |
※建物面積120㎡、エアコン効率は考慮していません。
断熱等級4と断熱等級5より少し高断熱であるHEAT20 G1との年間電気代の差は106,260円となり、約350万円を35年ローン・金利0.4%で返済した際の年間返済額と同額になります。
上記でも書きましたが、断熱性能を上げることにより電気代という経済メリット以外にも、暖房を付けていないお部屋の温度も下がりにくくなり快適性が上がるという恩恵も受けることができます。
建売住宅では難しいですが、注文住宅の場合で標準仕様が断熱等級4で等級5にグレードアップする費用が350万円未満であるならば、オプション費用を払って等級5以上にした方が快適性も上がり経済的にもメリットが生まれると思いませんか。
また、同じ室温でも窓や室内の壁の表面温度が低いと、体感温度が上がりませんので、グレードアップするなら高性能な窓を選びましょう。
最後に
キッチンやユニットバスを高級仕様にしたところで、設備は10年も経てば汚れや傷がつき、20年で交換の時期になってしまいますが、構造躯体や断熱性能は基本的に壊れませんので、壊れないところにお金を掛けた方がお得だと思いませんか。
ご実家が持家であれば、現在のキッチンやバスルームの状況を再度確認してみてください。
新築時にはピカピカだったものが、経年劣化で傷みも出ていると思います。
また、検討している家の階段廻りも気を付けて頂きたいポイントですので、35年後の自分若しくはご両親(35年後の自分)が住むことをイメージしてください。
35年もの長期ローンを組むのはお客様ご自身ですので、営業スタッフのセールストークに惑わされることなくご判断してもらえると嬉しいです。
ご意見、ご感想などお聞かせください。
建売住宅の内覧時に見ておきたいポイントと注意点
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